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この橋は、通潤用水と呼ばれる水路の一部であり、北側の取入口から橋の上に設置されている凝灰岩製の通水菅を通って、 白糸台地のある南側へ水が吹き上がる仕組みになっています。通潤橋を渡った水は 白糸台地上の約100haの水田を潤しています。
通潤橋は、1854年(嘉永7年)、四方を河川に囲まれた白糸台地に農業用水を送るために建設された近世最大級の石造アーチ水路橋で、長さ約78m、高さ約21.3mを誇ります。通潤橋を渡った水は今もなお白糸台地上の約100haの水田を潤しています。2016年4月の熊本地震による橋上部の損傷に加え、2018年5月の豪雨で石垣が崩落するなどの被害を受け、保存修理工事を行ってきましたが、2020年に約4年ぶりに放水が再開することとなりました。
その1
その2
その3
その4
その5
2016年4月14日、16日に発生した平成28年熊本地震※により、橋上に敷設されている通水管の目地から多量の漏水が確認されました。これは、地震により目地に充填されている漆喰が破損したことによるものと推測されます。
また、橋上端に積まれている石材(通称:手摺石)が、地震の振動によりずれが生じて外側にせり出しているほか、通水管の間にある被覆土にも亀裂が確認されています。
※前震:5強、本震:6弱
2017年4月から修理工事に本格着手し、地震により変形した石垣上端の手摺石(上から2段)の積み直し、漏水が確認される通水管の目地漆喰の詰め直しを実施しました。地震で破損した目地は、通水管の各所で確認され、600m以上に及ぶ目地に漆喰詰めを行いました。この工事期間中には、2000年〜2001年の修理工事以来17年ぶりに橋上の被覆土を掘り上げ、農業用水を通す3列の通水管が姿を現しました。
2018年5月7日、正午すぎ、熊本地震からの修理工事の完了を目前とする中、未明より降り続いた雨により、右岸上流側(道の駅側)の石垣の一部が崩落しました。崩落した壁石は93石。落石は、通潤橋の手前の土手や橋の下を流れる五老ヶ滝川の中にまで広がりました。通潤橋の歴史のなかで石垣が崩れたのは、初めてのことです。
2018年5月の崩落以後、河川や土手からの石の引き上げ、壁石の元の位置の特定等を行い、2019年4月から工事を進めました。石垣が崩れた後も通水管は原形を留めていましたが、石管の下に積まれている石材の損傷なども確認されたため、崩落部に近い通水管1列の37石を一度取り外した上で、修理を進めました。石垣は、崩落した93石を含む148石を積み直しています。今回の工事では、建造後初めて通水管の下部や石垣の内部の構造が露わになり、用水を通す通水管が変形しないよう、大きな石材でがっちりと組み合わされた状態が明らかになりました。